AAN 2017の学会報告

2017年05月02日 お知らせ

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学会参加報告 ~AAN 2017 at Boston, MA~

米国ボストンで開催されました米国神経学会年次集会2017に参加しました.
Bostonは,東海岸北部の人口約60万人の都市です.紅茶会事件で,米国独立戦争の始まりとなった歴史のある街です.少し前は,松坂,上原投手のRed Sox,Boston symphonyのSeiji Ozawaで有名でした.全米トップ50の大学が6つあり,ハーバード大学,MIT,高野先生がご留学なさっていたマサチューセッツ総合病院(MGH),Brigham and Women’s hospital,Tuftsとあげればきりがないぐらいの,学術都市です.今から約20年前に初めて訪れたときに,有名な大学,病院がいくつも存在し,世界中からのエリートがあつまり,いつかここに来て,勉強してみたいと思った都市です.そして,ちょうど10年前のAAN総会にも参加しており,その時,他田先生はPlatformで発表されておりました.私は初めてPSP-C病型を報告し,とても著名な先生にいろいろ質問,意見いただいたことを昨日のことのように覚えています.

今回のAAN annual meetingは,前回以上に,演題数,さらにplatform sessionが減っていました.しかし,以前では投稿規定で不可とあったcase reportでも,今回は採択されているものが多かったと思います.前回同様,教育講演が非常に増え,朝から晩まで会場はあふれんばかりのDr.が勉強していました.ここ最近のAANの流れなのだと思います.それが参加費に含まれるため,参加費は高いですが(非会員では>10万円),とても充実した勉強になると思います.レジデントは約3万円,学生は参加費0円なので,若い先生の参加をお勧めします.前回も思いましたが,費用が高いためか,アジア人の参加は非常に減りました.日本人も少なかったです.参加人数約1万人の30%はinternational memberとのことでしたので,南米,ヨーロッパが増えているのかもしれません.企業の出展もとても多く,一時期は,アルコールもでなかったのが,今回もたくさん出ており,資金面の充実を感じました.

今回,当科からは三浦先生,目崎先生,下畑先生,池内先生が参加され,Mayo, Jacksonvilleに留学中の今野先生もこられており,元気そうでした. また,立川病院の高野先生もご参加されていたことを帰国後知りました.
今回,abstractのないplenaryの内容を記します(plenaryにでるため,帰国便を午後にしました.しかし,乗り継ぎのChicago O’hareでは,concourseを走るは,帰国後も,終電ぎりぎりでした.こんなtight scheduleはもうやめたいと思います).

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金澤先生

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三浦先生

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目崎先生

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今野先生(Mayo Clinic)

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高野先生(立川綜合病院)

Presidential Plenary
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  • Cascino@Mayo

日本の総会では,会長の過去の業績,回顧録が多いが,AANではそれはない.この先生は,昨年も会員,medical stuffなどに,感謝を繰り返していたが,今年は任期の最後であり,また感謝を繰り返していた.また,Pt careのために,科学の発展が重要で,そのための予算獲得が必要で,Academyが,どうやって関わるかを提起していた.Academyが政府に直接働きかけるというのだから,すごいことである.しかも,face to faceが重要とのこと.

 今年のNeurology誌に,Neurologistが,どれぐらいburnoutが多いかの報告されているが,今回の主題はburnoutをいかに防ぐかということであった.他の臨床医と比べてもburnout率が高く,理由は書類業務が多いためである.直接患者さんを診ることが,lower burnoutにつながるとのことで,clerkshipを導入することが有効とのことである.academyがburnoutさせないように,主導していくという話であった.

 Clinical issue,scienceも大事だが,政策的なかかわりも学会の仕事なのだろう.

  • Prof Newmanの話(Houston Merritt lecture)

21世紀の眼底鏡の話.実際には救急外来(ED)で眼底検査を簡便にすることがどれだけ重要かという話であった.例えば,頭痛の患者さんでも米国では簡単にはCT・MRIは取れない.しかも,外来再診だって,下手をしたら数週間先である.実際の症例として,頭痛を繰り返し,偏頭痛が疑われていたが,頭蓋内圧亢進症状だったという例があがったが,これはありえることである.EDに必ず眼底鏡があるが,使われていないのは米国も同様らしい.しかし,眼底を見れば,そのような症例を感度よく検出できるはずというのが始まりであった.無散瞳のカメラの装置を用いて,看護師,nurse practitionerなどが評価できるかをNEJM,Ann Emerg Medに報告している(米国は医師以外の人が検査を行う).まだ,missreadingあるし,カメラ自体が高額であるが($15k),どんどん精度も改善し,価格も低下しているとのこと.病棟にもあるが,iPhoneで見れる装置もいくつか販売されており,将来これで簡便に診察できるだろうと.

眼から鱗というのはこういうことだろう.

この後,物故会員の追悼.今年は多かった.最後に,Merritt’s Neurologyの著者U of PenのProf Rawland も出てきた.3月にStrokeでなくなったとのことであり,びっくりした.

  • Petersen Robert Wartenberg lecture

いかにADを早期診断するかというはなし.ご存知のようにAβdepositが始まりで,その後神経細胞死,認知機能低下となる.病態に応じた治療を発症前に介することがADの研究の主体であるが,ATN frameworkがすでに,主流になっている.A: amyloid depositはCSF AbetaやPETで検出,T: tauは髄液p-tau,tauPETで検出,N: neuronal damageはstructural MRI (cortical thickness),,FDG-PETで検出し,診断するのが今の基準のよう.

Clinical Trial Plenary Session

以前はなかったように思うが,これが行われるのは,自然な流れだろう.

  • 脳出血の血圧管理(ATACH-2 trial,Qureshi NEJM2016)

脳出血の血圧管理は低ければ低い方がいいと考えられていたが,そうでもないことが最近示されていた.Standardを140^179,Intensiveは110~139mmHgを目標にコントロール.24時間後の血腫体積は,10cm^3ではintensiveの方が体積自体は抑えられても,結局,全体では両郡はかわりなし.outcomeにもかかわらず,必ずしもintensiveであることはないということ.

 この報告はISC2017でも当然示されており,それから先は24時間以内のhyperacute phaseなら,十分な降圧が必要でも,そのあとやる必要がないとされている.私自身もそうしているし,ガイドラインは変わると思う.

  • DMDに対するexon skipping  Mendell

今回,antisense oligoや遺伝子治療が多い印象があった.私が小学生のときは,DMD自体の治療は困難と思っていたが,eteplirsenというexon skipping drugをつかうことで(Cirak et al. Lancet 2011),Exon51はスキップされる.実際には薬剤の効果するのは,20%未満であるが,3年間歩行テストで改善がしめさえた(Ann Neurol 2016).安全性も確認され,Orphanであり,治療を急ぐべき疾患であることで,FDAもすみやかに2016年に認可している.

  • CHAMP study NEJM 2017

8~17歳に対するamitriptyline,topiramateの有効性を検討.結果はnegativeで,効果は示されなかったが,子供と大人は違うということが,重要であった.座長からの質問として,大人に近い年齢の症例など,全例が効果ないのか,この結果で治療が変わったかということがあったが,aging自体がeffect barrierとなり,効果する例がいないわけではないこと,この結果で予防薬の投与量は減っているということであった.

  • SMA type 1 trial  Mendell(同じ先生が二つ報告)

本年1月に終了したもの.SMA type1は重篤で,20ヶ月の生存が8%だけである.AVXS-101 trialと呼ばれ,これはAAV9 vectorを用いてSMA遺伝子を導入する.静注でBBBを越えることができるのが利点である.結果,12例に行われ,2年以上の観察で15ヶ月以上全例が生存.副作用なく,今後15歳まで経過観察の予定である.Floppy infantが特徴の疾患であるが,座位も取れるし,歩行可能となっているビデオが示され,会場から拍手喝采.確かに,このような医療がphaseⅢ間で終わっていることを考えると,治療を目指していくのは必然である.

まだまだこれから面白いsessionもあったと思いますが,参加が短かったので,この程度にまとめます.今回の印象としては,例年と比べると認知症の取り扱いが少なかったこと,意外とCVDの話も多かったように思います.また,外傷やsports medicineがここ数年多いですが,これは米国のgrantが増えていることによることしりました(traumatic brain injuryでのtau蓄積,認知症発症が高率である事がNeurology誌に報告されている).米国では,アメフトが一番人気のスポーツで,巨大な市場であり,それに対してお金が集中しているそうです.取り組みが多いのは,結局はそこにお金があつまっているのが理由なのです.

次回のAANはLAです.日本から近いこともあり,日本やアジアの参加者が多いでしょう.今では,羽田夜発便,早朝着便もありますから,仕事をしてから参加して,帰国後午前から普段の仕事に戻れます.
普段の仕事の疑問を解決するような課題を見つけて,頑張って演題をだしましょう(そのためには,指導医の私が頑張らないといけませんね).

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会場隣のブランコ

金澤 雅人

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