当科主導のSCA6医師主導治験が論文化されました

2024年11月26日 脳神経内科だより

SCA6に対するL-アルギニンの安全性、有効性を検討した第2相治験(AJA030-002,jRCT2031200135)の結果が、eClinicalMedicineにオンライン公開されました.

本治験は日本国内の5施設(新潟大学,国立精神・神経医療研究センター,東京医科歯科大学(現東京科学大学),大阪大学,近畿大学)が参加して,当科主導の多施設共同プラセボ対照二重盲検無作為化群間比較試験として2020年9月から2022年9月まで行われました.

48週間後の治療効果判定では,L-アルギニンを内服した患者さん群では,SARAが0.96±0.55点改善していました.一方でプラセボを内服した患者さん群ではSARAは0.56±0.55点悪化していました.2つの群の差からは,1年間でおよそSARA 1.5点分の治療効果が見られたといえます.残念ながらこの効果は統計学的には有意ではありませんでした(p=0.0582).今後はより大人数での第3相試験が行われることが期待されます.

複数施設が参加する医師主導治験を計画・実施したのは,当科ではおそらく初めての経験でした.プロトコールの作成,国の関連機関への申請・折衝や,治験薬製造・保存・運搬業者とのやりとり,など初めて経験する事ばかりで,治験期間中は激動の数年間でした.多くの方々よりサポートを頂きつつ,何とか論文としてまとめることができ,安堵しております.

本治験に際しては,国内の複数施設の先生方,患者さんにご参加,ご協力を頂きました.また本学においては,評価・診察に協力いただいた先生方,患者さんを紹介いただいた当科関連病院の先生方,治験全般でご協力を頂いた臨床研究推進センターの皆様に改めて御礼を申し上げます.(文責: 石原智彦)

【論文タイトル】L-arginine in patients with spinocerebellar ataxia type 6: a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial

【著者】Tomohiko Ishihara, Masayoshi Tada, Yoshitomi Kanemitsu, Yuji Takahashi, Kinya Ishikawa, Kensuke Ikenaka, Makito Hirano, Takanori Yokota, Eiko N. Minakawa, Katsuhisa Saito, Yoshitaka Nagai and Osamu Onodera

【doi】10.1016/j.eclinm.2024.102952

同研究の脳研究所ホームページでの紹介

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