国際パーキンソン病運動障害学会(MDS)の学術大会にて講演を行いました

2023年09月04日 脳神経内科だより

(新潟県立燕労災病院(新潟県央基幹病院)脳神経内科 小澤鉄太郎 先生 記載)

先頃8月27日〜8月30日に,デンマークのコペンハーゲンにて開催された,国際パーキンソン病運動障害学会(MDS)の学術大会(International Congress of Parkinson’s Disease and Movement Disorders 2023)にて教育コースの講演をさせて頂きましたのでご報告いたします.この教育コースのテーマは「Bedside Approach and Management of Autonomic Dysfunction in Parkinson’s Disease and MSA」という臨床的内容で,私が依頼を受けたタイトルは「Respiration and Sleep Dysfunction」でした.

座長の先生方は,カナダ McGill UniversityのRonald Postuma 先生と台湾 National Taiwan UniversityのRuey-Meei Wu 先生でした.両先生ともパーキンソン病と類縁疾患の睡眠と自律神経障害の研究で多くの業績がお有りです.

このセッションの演者は,私を含めて3名であり,それぞれの講演タイトルは,

1.Aseel Aburub 先生(ヨルダン Keele University):「Cardiovascular and Thermoregulation Dysfunction」

2.小澤 鉄太郎(新潟県立燕労災病院):「Respiration and Sleep Dysfunction」

3.Horacio Kaufmann 先生(米国 New York University):「Neurogenic Bladder and Bowel Dysfunction」

でした.100名ほど収容の会議室が満席となりました.聴衆の皆さんは専門医からパラメディカルスタッフまでさまざまなバックグラウンドの方々であったと思います.上記3名による講演の後に30分ほど質疑応答の時間があり,パーキンソン病と多系統萎縮症の自律神経症状について熱心な議論が交わされました.私に対しては,Alex Iranzo 先生(スペイン Hospital Clinic of Barcelona)より,「多系統萎縮症患者さんの夜間喘鳴をめぐっては覚醒時の声帯運動もよく解析すべきではないか?また,睡眠時について吸気時のみならず呼気時の異常も見られるのではないか?」という重要なご質問を頂きました.これについては「確かにその通りで,多系統萎縮症の声帯運動には複数の異なる病態生理が絡んでおり,単純ではなく,覚醒時・睡眠時ともに所見の仔細な解析は必要です」とお答えしました.また,座長のPostuma 先生より「睡眠の専門的検査ができないような医療機関では,患者さんの喉頭喘鳴の有無を評価するにはどうしたら良いか?」とのご質問を頂き,これについては症状のスマートフォン録音をお願いして後日それを聞かせて頂く,または,診察医が自ら喘鳴を声帯模写してご家族の心当たりを伺う,などの方法をご提案させて頂きました.この講演内容の録画録音は,学会への参加登録された方であれば9月15日以降に学会サイトで視聴可能とのことです.

今回の講演では,パーキンソン病や多系統萎縮症の患者さんを診させて頂く上で大変貴重な経験を頂いたと思います.これまでご支援頂いた方々に心より感謝申し上げます.
Bella center

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