ECTRIMS 2018
ECTRIMS (欧州多発性硬化症会議) 2018がベルリンで開催されました
2018年10月10日から10月12日までECTRIMS (欧州多発性硬化症会議) 2018がベルリン (ドイツ) で開催されました。世界から1万人の神経内科医, 神経科学者, 製薬企業が参加する世界最大の多発性硬化症 (MS) 研究を論じる学会です。大きな国際会議場が参加者で満杯になりました。https://www.youtube.com/watch?v=qhlSRTLpa4o&feature=youtu.be
Plenary session (本会議) ではMSの大家であるケンブリッジ大学のAlastair Compston先生によるECTRIMS lectureが行われました (昨年はウイーン大学のHans Lassmann先生によるlectureでした)。19世紀来のMSの歴史から将来の課題を論じる壮大で素晴らしい講演でした。この中で, 光栄なことに河内とウイーン大学のHans Lassmann先生の総説論文 (https://jnnp.bmj.com/content/jnnp/88/2/137.full.pdf) が大きく引用されました。反響が大きかったらしく, 日々, 懸命に勤めている我々の仕事も一定の評価をいただいたものと, 感慨深い場面でした。
当科からの演題は下記です。
- 若杉尚弘先生 (大学院生) ‘A longitudinal study of cognitive function in a Japanese cohort of NMO and MS’ (e-poster)
- 佐治越爾 (助教) ‘Unique clinical features of late-onset neuromyelitis optica spectrum disorders in a Japanese cohort’ (これは現在, 新潟県立中央病院で研鑽中の中島章博先生が参画し行った研究です)
ECTRIMSに引き続き, IMSCOGS年次集会 (MS認知機能学会) がベルリン大学・フンボルト大学附属シャリテー (欧州最大の大学病院) の附属施設で行われました。ベルリン大学・シャリテーは, 幕末以来の日本の医学史にとって極めて重要な地です。森鴎外, 北里柴三郎, Heinrich-Moritz Romberg (ロンベルグ徴候を初めて記載した), Robert Kochもベルリン大学・シャリテーで医学を修めています。緒方洪庵が訳した「扶氏医戒之略 (原著名: Enchiridion Medicum)」 (http://www.onh.go.jp/enkaku/rekishi/tekizyuku.html) の原作者である扶氏 (Christoph Wilhelm Hufeland) はシャリテーの初代病院長でした。IMSCOGSのランチタイムにシャリテーを散策していた時, 偶然, 扶氏 (Christoph Wilhelm Hufeland) が眠るお墓に出会いました。「扶氏医戒之略」は, 幕末から現代に至るまで, 多くの日本人医師に読み継がれてきた医師の処世訓です (レジデントの先生も, 一度, 読むことをお薦めします)。ベルリンの地で扶氏の生きていた時代を振り返りながら, 今一度, 医学のあるべき姿を考え, 懸命に研究と臨床に取り組もうと心を新たにしました。(河内泉)