PACTALS 2018 に参加して
2018年7月19-20日,韓国ソウルで開催のPan-Asian Consortium for Treatment and Research in ALS(PACTALS)2018に参加してきました.会場はオリンピック記念公園のそばの Seoul Olympic Parktel です.私の発表はポスターで,SMN2遺伝子コピー数多型がALSに与える影響を検討したものでした.
Pan-AsiaということでOral の発表者は,韓国,日本,中国,台湾,マレーシア,インドネシア,インド,オーストラリア,アメリカなどから,Posterでは,シンガポール,モンゴル,フィリピンなどからも発表がありました.ALSは患者,地域ごとのheterogeneity が高く,将来の世界人口の大半を占めるであろうアジアでの疾患研究は意味ある事と考えます.
発表は各国のALSの遺伝的な背景の検討や,データバンクについてのものが多かったです.台湾ではC9orf72変異が他のアジア地域と比較してなぜか多い(孤発性で4/244,家族性で7/42)点は興味深いところでした.治療については,間葉系幹細胞移植(MSC:Mesenchymal stem cell)が目を引きました.マサチューセッツのCudkowicz先生(Plenary session)のNurOwn(治験中)や韓国Corestem社のNeuronata-R(Phase3治験中,でも販売中?)です.いずれも患者骨髄細胞から,Stem cellを培養し,髄注投与します.MSCからの各種神経栄養因子の分泌,炎症の抑制,M2ミクログリアの誘導などを介して,神経保護効果を狙っています.幹細胞かららの運動神経への分化,再生をめざす治療ではないです.ということはALS以外の神経疾患にも有効なはずで,実際にパーキンソン病,脊髄小脳変性症,多発性硬化症などでの研究が進んでいます.
夜には学会に参加していた日本の先生方にお誘いいただいて,ソウル市内に移動して食事をし,東大門周辺で少しだけ観光もできました.東大門歴史文化公園のような至って現代的なデザインと,(勝手なイメージで)30年くらい前の大阪の路地的な雑踏が混在する空間で,この国の伸びしろを感じる場所でした.整備された地下鉄網内のホームに普通に置いてある防毒マスクにも,日本にはない緊張を感じるところです.
飛行機の関係で実際の参加は7月20日の初日だけでしたが,今後の研究の刺激になる学会でした.一方で今回に限らずですが,日本からの参加者,発表者の少なさも感じました.研究内容や質は決して他国に引けを取っていないはずなので,国際学会,英語発表という点がハードルを上げているものと思われます.自分の語学力を棚に上げてですが,綺麗な発音や完璧な文法が求められるわけではないので,若い先生も度胸をつけて積極的に海外学会に参加することが必要と感じます.